成長する過程で、自我を形成してきたのとは裏腹に、
見境なく享受してきた、汎用的な価値基準。
ありふれた社会性や道徳や良識や正解は、人の血肉となり、
素晴らしく文明的で集団的で画一的な我々を量産している。
アイデンティティとその核心。
私は己を見栄え良く包み隠す移植膜を一枚一枚ひっ剥がして、それを露にしたい。
そのピュアな核心を価値基準に押し上げ表現することは、全裸を晒すような行為で、
もしかしたら不道徳で不謹慎なことかもしれない。
しかしその何人にも備わった唯一無二のオリジナリティの披瀝にこそ、
誰も知らなかった新しい問いと新しい答えが潜んでいることを信じている。
私は、絵を描きたい訳ではなく、モノを造作したい訳でもない。
ただ伝えたいのだ。感じるものと信じるものを伝えたいと思っている。
それにより社会を変えたいとか人を魅了したいという思いは薄く、
ただ、作品をとおして鑑賞者のイマジネーションを刺激し、
共鳴や共感する人を探しだし、
種としてのつながりを感じたいだけなのかもしれない。