Self-control For Safety

世の中の人々は皆、誰かの作った製品に囲まれて生活をしている。時として、その製品がもとで怪我をしたり病気になったり、あるいは死亡することだってある。そういう際に被害者の保護を図る目的で制定されたのが製造物責任法(PL法)である。これにより、法文にあるように「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与する」ことは叶えられたのかもしれないが、その反面で製造者の過度な自衛や自粛が消費者との不協和音を生んでいることも事実である。製造者はクレームや訴訟を恐れ、デザインを無難なものに変え、製品まわりの広告宣伝物、パッケージ、操作説明書などには、万が一にも起こりえないような注意書きを神経質にびっしりと書き綴ったり、どうでもよいような同意を事前に求めたりする。このような過度な対応が、製品を画一化し、可読性の低い膨大なゴミのような文章を生み、むしろ消費者には届かないメッセージとなった。また、そのような文章は読んでもらうことよりも、記載自体に重きを置くようになり、本来の国民保護の目的は形骸化しているといえよう。先日、ダミアン・ハーストのホルマリン漬けの作品から発がん性物質のホルムアルデヒドガスが検出されという報道があったが、作品の製造者たる作家もまた、製造者責任に必要以上に神経を尖らせる時勢になるのかもしれない。そんな現代社会の歪みを浮き立たせ、問題提起を試みた作品である。


Self-control For Safety , 2016
〈あなたが万一、石となってしまわないように〉 W15.0×H29.5×D10.0cm ミクストメディア
〈あなたが万一、厄災に遭ってしまわないように〉 W28.0×H28.0×H28.0cm ミクストメディア